とうとう観ました。といっても新作映画のではない。マキノ雅弘監督のほう。今までずっと機会を逃してきたのでねえ。新作のほうも時間があったら観にいこうかな。 古い「次郎長三国志」は9作シリーズの第1弾。スカパーで上映されました。 やはり虎造の声がいいねえ。啖呵がいいねえ。 虎造の「清水次郎長伝」は、何度も聞いて真似して勉強したっけな。 さすがにこの人、声だけで勝負できる人。声の演技が正確だから、体の動きが少しで済む。しかも声優の芝居でなく、声だけが浮き上がることもない。いいね。 いろいろと参考になる演出がありましたな。 湿っぽいラブシーンも、湿り過ぎている感はありつつも、役者の動きが場面を鮮やかに描いている。近づく・離れる・立つ・座る・振り向く・逸らすなどの人物の関係性を距離感と行動で演出するあたりは、マキノ雅弘の真骨頂らしいし。 そうなんです。難しいのは、微妙な距離感。電車に乗っていることひとつにも、近くの人との距離感を意識するものなのに、芝居になると、それが意識から消えてしまうのが難しいところ。役者にしても、劇作家にしても。 別役実の作品に、どうしてもつきまとう違和感は、人と人との距離が最初の段階から近すぎるということ。コミュニケーション過多なところだろうか。きっと作家の策略はあるのだろうけど。 次郎長の物語に出てくる人は、みんな魅力的な人だから、そんな個性的な人物たちが、小気味よく動きまわるところは見ていて楽しい。 桶屋の鬼吉と関東綱五郎の飲み屋でのやりとりの場面なんて、あそこまで二人がいきいきと動くは、現実にはあるにせよ、芝居で作るのは難しい。 二人のような登場人物の心が大きく揺れ動くときは、このように大きく動きまわるのが必要なのね。 ええ、とにかく、活きのいい人間が小気味よく動くのは、見ていて気持ちのいいものだ。こんな軽やかさがあふれている映画っていいね。 顔だけの心理芝居ばかり見せられるのは御免だ。体全体が顔。 また明日からの2作目の放送が楽しみだな。