引き続きロミオとジュリエットを読む。
マーキュシオの謎のことばは、ひとりの人間が突然思いもよらないかたちで被害をうけ、その原因が憎むべき敵と親友の両方にあるのだから、彼が死に際に恨み節を吐露する気持ちはよく分かる。
しかし、彼すらが、両家の敵対する状況の最先端にたって、喧嘩をひき起こしていたのだから、この捨て台詞にこめられていた恨み節は、結果的に彼の超越的な態度の限界、彼のユーモアの限界を示していたこととなる。
もしくは、剣の一突きによって真実にめざめたとでもいうべきか?
彼の「両家ともくたばってしまうがいい」という言葉は、確かにそのとおりなのだが、自分で引き起こした戦いの結末としては、感情的になりすぎている。そして、いくぶん虚無的だ。
マーキュシオが死ぬ前までの場面は、主要な3人、ティボルトの名誉を守るための闘争を選ぶか、マーキュシオの虚無的な皮肉を選ぶか、ロミオの無力な友愛を選ぶか、その葛藤が激しく噴出している場面だ。そして、前者ふたりは憎しみとエゴイズムが生み出す破局的な状況の枠内の行動で、ロミオはその狭い領域からの越境をはかった行動といえる。
ロミオが手を握り合おうと友愛を呼びかけたことは、愛のエゴイズムのために臆病になってしまったと理解するのがよいのか?それとも、ロミオこそが愛のために真実をつかんだと理解するのがいいのか?
激しく敵対し、泥沼になった戦争状態は、考えるまでもなく現代世界の状態でもある。それが当たり前であるかのように、現実的という名の麻痺が蔓延している。
ロミオの高邁な思想は、親友であるマーキュシオの死により、自分自身の手で打ち砕いてしまう。直前に寛大なことばを吹聴した者とは考えられないほど、憤怒と衝動にかられて自分自身を否定する。
ロミオの悲劇はここにある。
そして、人間の高邁な愛が敗北するのは、ロミオとジュリエットが死なざるを得なかった状況だけでなく、ロミオが自分自身をあやめたところにもある。
結局、暴力をふるわなかったり、待ち続けた者だけが、寛大な行為をしているといえるのか?
そうした意味で、ジュリエットですらが急ぎすぎていたわけで、沸騰する青春の悲劇はその熱さに原因があるのかという、いささか絶望的な結論をしてしまうことにもなる。
悲劇をもたない人生など意味がない、などと慰めてはみても、やはりこれだけの人数が数日のうちに死んでしまう状況は肯定はできまい。
そして最後に残るのは、ロミオとジュリエットが愛し合ったということ。語り継がれるのはこの愛だけだということ。
愛した当人たちが存在しなくても、これだけは生き残るべき、守るべきものだから。
ロミオとジュリエット
ロミオとジュリエット(その2)
マーキュシオの謎のことばは、ひとりの人間が突然思いもよらないかたちで被害をうけ、その原因が憎むべき敵と親友の両方にあるのだから、彼が死に際に恨み節を吐露する気持ちはよく分かる。
しかし、彼すらが、両家の敵対する状況の最先端にたって、喧嘩をひき起こしていたのだから、この捨て台詞にこめられていた恨み節は、結果的に彼の超越的な態度の限界、彼のユーモアの限界を示していたこととなる。
もしくは、剣の一突きによって真実にめざめたとでもいうべきか?
彼の「両家ともくたばってしまうがいい」という言葉は、確かにそのとおりなのだが、自分で引き起こした戦いの結末としては、感情的になりすぎている。そして、いくぶん虚無的だ。
マーキュシオが死ぬ前までの場面は、主要な3人、ティボルトの名誉を守るための闘争を選ぶか、マーキュシオの虚無的な皮肉を選ぶか、ロミオの無力な友愛を選ぶか、その葛藤が激しく噴出している場面だ。そして、前者ふたりは憎しみとエゴイズムが生み出す破局的な状況の枠内の行動で、ロミオはその狭い領域からの越境をはかった行動といえる。
ロミオが手を握り合おうと友愛を呼びかけたことは、愛のエゴイズムのために臆病になってしまったと理解するのがよいのか?それとも、ロミオこそが愛のために真実をつかんだと理解するのがいいのか?
激しく敵対し、泥沼になった戦争状態は、考えるまでもなく現代世界の状態でもある。それが当たり前であるかのように、現実的という名の麻痺が蔓延している。
ロミオの高邁な思想は、親友であるマーキュシオの死により、自分自身の手で打ち砕いてしまう。直前に寛大なことばを吹聴した者とは考えられないほど、憤怒と衝動にかられて自分自身を否定する。
ロミオの悲劇はここにある。
そして、人間の高邁な愛が敗北するのは、ロミオとジュリエットが死なざるを得なかった状況だけでなく、ロミオが自分自身をあやめたところにもある。
結局、暴力をふるわなかったり、待ち続けた者だけが、寛大な行為をしているといえるのか?
そうした意味で、ジュリエットですらが急ぎすぎていたわけで、沸騰する青春の悲劇はその熱さに原因があるのかという、いささか絶望的な結論をしてしまうことにもなる。
悲劇をもたない人生など意味がない、などと慰めてはみても、やはりこれだけの人数が数日のうちに死んでしまう状況は肯定はできまい。
そして最後に残るのは、ロミオとジュリエットが愛し合ったということ。語り継がれるのはこの愛だけだということ。
愛した当人たちが存在しなくても、これだけは生き残るべき、守るべきものだから。
ロミオとジュリエット
ロミオとジュリエット(その2)
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